床ずれ予防の決定版ガイド

はじめに

床ずれ（褥瘡）は、皮膚が長時間圧力や摩擦にさらされることで発生する、深刻な皮膚損傷です。身体に十分な血流が供給されないと、組織が酸素や栄養素を失い、損傷につながります。

日本褥瘡学会によると、日本の年間入院患者数における床ずれの有病率は約7%と報告されており、医療現場では大きな問題となっています。また、国立社会保障・人口問題研究所の調査では、65歳以上の高齢者の約3人に1人が、何らかの床ずれの経験があることが明らかになっています。

床ずれは、単なる皮膚の損傷にとどまらず、感染症や疼痛、長期的な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、床ずれの予防は、特に長期臥床者や高齢者にとって非常に重要です。

このガイドでは、床ずれ予防の包括的な情報を提供します。床ずれの原因やリスク因子、効果的な予防策、最新の治療法などについて詳しく解説します。

目次

• 床ずれとは？
• 床ずれの原因とリスク因子
• 床ずれの予防策
• 床ずれの治療法
• 床ずれ予防のヒントとコツ
• まとめ

床ずれとは？

床ずれは、皮膚が長時間圧力や摩擦にさらされることで発生する、皮膚や皮下の組織の損傷です。皮膚が圧迫されると、血流が遮断され、組織に酸素や栄養素が供給されなくなります。この状態が続くと、組織は壊死し、床ずれが発生します。

床ずれは、通常、身体の突出部に発生します。主な発生部位は以下の通りです。

• 仙骨部
• 尾骨部
• 踵
• 臀部
• 肩甲骨
• 肩

床ずれの原因とリスク因子

床ずれは、身体に圧力や摩擦が加わることが主な原因です。以下のような要因が、床ずれのリスクを高めます。

• 長期臥床: 長時間同じ姿勢で横たわっていると、特定の部位に持続的な圧力が加わります。
• 高齢: 高齢者は皮膚が薄く、血流が低下し、床ずれになりやすくなります。
• 栄養不良: 栄養不良になると、皮膚の治癒力が低下し、床ずれのリスクが高まります。
• 失禁: 尿や便が皮膚に付着すると、皮膚が湿り、床ずれが発生しやすくなります。
• 麻痺: 麻痺すると、身体の一部分の感覚が失われ、圧力や摩擦による痛みを感じにくくなります。
• 特定の病気: 糖尿病や末梢動脈疾患などの特定の病気は、血流を低下させ、床ずれのリスクを高めます。

床ずれの予防策

床ずれの予防は、リスクファクターを軽減することが重要です。以下のような予防策が効果的です。

• 体位変換: 定期的に体位を変換し、身体の特定の部位に持続的な圧力が加わるのを防ぎます。一般的には、2～3時間ごとに体位を変換するのが推奨されています。
• 褥瘡予防マットレス: 褥瘡予防マットレスは、圧力を分散させ、身体の突出部に十分なサポートを提供するように設計されています。
• クッションや保護具: 踵や肘などの突出部にクッションや保護具を使用すると、圧力や摩擦から保護できます。
• 皮膚の清潔と保湿: 皮膚は清潔で潤っていると、床ずれに対する抵抗力が高まります。定期的に皮膚を洗浄し、保湿剤を使用します。
• 栄養管理: バランスのとれた食事で栄養を十分に摂取するようにしてください。タンパク質は皮膚の治癒に不可欠です。
• 禁煙: 喫煙は血流を低下させ、床ずれのリスクを高めます。
• 失禁の管理: 失禁があると、皮膚が湿り、床ずれが発生しやすくなります。失禁パッドやバルーンカテーテルを使用するなど、失禁を管理することが重要です。

床ずれの治療法

初期段階の床ずれは、適切な予防策を講じることで治癒できます。ただし、重度の床ずれは、治療に時間がかかる場合があります。治療法は、床ずれの重症度によって異なります。

• 早期段階の床ずれ: 創傷被覆材や褥瘡予防マットレスの使用が一般的です。
• 中等度～重度の床ずれ: 抗生物質、外科的処置、負圧閉鎖療法などのより積極的な治療が必要になる場合があります。

床ずれ予防のヒントとコツ

• 専門家に相談する: 床ずれ予防については、医師、看護師、理学療法士などの医療従事者からアドバイスを受けましょう。
• リスクアセスメントを行う: 定期的にリスクアセスメントを行い、床ずれのリスクを特定します。
• 患者を教育する: 患者とその家族に床ずれ予防の重要性と予防策について教育します。
• 多職種間の連携: 医師、看護師、理学療法士などの医療従事者間で連携し、包括的なケアを提供します。
• 褥瘡予防委員会を設ける: 医療機関では、褥瘡予防委員会を設け、床ずれ予防に関する方針や手順を策定します。

まとめ

床ずれは、身体の突出部に長時間圧力や摩擦が加わることで発生する深刻な皮膚損傷です。高齢者や長期臥床者では特にリスクが高くなります。床ずれの予防は、リスクファクターを軽減し、定期的に体位変換や褥瘡予防マットレスの使用などの予防策を講じることが重要です。重度の床ずれは、治療に時間がかかる場合があります。専門家に相談し、患者を教育し、多職種間の連携を通じて、効果的な床ずれ予防を図りましょう。